ドンペリドンの効果と副作用:飲み方・市販の有無・プリンペランとの違いまで解説
吐き気や嘔吐、胃もたれが続くときに処方される薬のひとつがドンペリドンです。病院や診療所で処方されたものの、どのような仕組みで効く薬なのか、いつ飲めばよいのか、副作用はどの程度あるのかがわからず、不安に感じる方も少なくありません。
ドンペリドンは、胃や腸の動きを整えながら吐き気を抑える消化管運動改善剤です。先発医薬品であるナウゼリンと同じ有効成分を含んでおり、一般的な錠剤のほかに、水なしで飲める口腔内崩壊錠、小児向けのドライシロップ、坐剤といった剤形が用意されています。
この記事では、ドンペリドンの効果と作用の仕組み、効果が出るまでの時間、正しい飲み方、副作用と注意点、プリンペランなど他の吐き気止めとの違い、そして市販薬の有無と入手方法までを、添付文書などの公開情報をもとに整理してお伝えします。
※注意事項
本記事は、執筆時点で公開されている添付文書などの情報をもとにした一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の治療や薬剤の使用をすすめるものではありません。診断や治療方針の決定に代わるものではない点をご理解ください。
薬の効果や副作用の現れ方には個人差があります。同じ薬であっても、体質や年齢、持病の有無、併用している薬によって適否は変わるとされています。
ドンペリドンは医師の処方が必要な医療用医薬品です。服用の可否や用法用量については、必ず医師または薬剤師の判断を仰いでください。自己判断での服用や、他の人に処方された薬を使用することは避けてください。
ドンペリドンの承認されている効能効果は、慢性胃炎や胃下垂症、胃切除後症候群などに伴う消化器症状と、抗悪性腫瘍剤またはレボドパ製剤の投与時に生じる消化器症状です。乗り物酔いや二日酔い、妊娠中のつわりなどを目的とした使用は、承認された効能効果の範囲外にあたる場合があります。
添付文書の内容や薬価は改訂されることがあります。最新の情報については、製造販売元の公式情報や医療機関でご確認ください。
ドンペリドンとは?効果・効能と特徴
ドンペリドンは、薬効分類上「消化管運動改善剤」に分類される医療用医薬品の有効成分名です。胃の動きが低下したり、消化管の運動リズムが乱れたりすることで生じる吐き気や嘔吐、食欲不振、腹部の張りといった症状に対して用いられます。
日本では1980年代から使用されており、内科や消化器内科、小児科、婦人科など幅広い診療科で処方されてきた薬です。吐き気止めとしてのイメージが強い一方、実際には胃の内容物を先に送り出す働きも併せ持っており、吐き気だけでなく胃もたれや上腹部の不快感にも用いられます。
ドンペリドンの効能・効果
承認された効能効果は、次の疾患および薬剤投与時に生じる消化器症状です。具体的な症状としては、悪心、嘔吐、食欲不振、腹部膨満、上腹部不快感、腹痛、胸やけ、あい気(げっぷ)が挙げられています。
成人では、慢性胃炎、胃下垂症、胃切除後症候群に伴う症状のほか、抗悪性腫瘍剤またはレボドパ製剤を投与している際に生じる消化器症状が対象です。レボドパ製剤はパーキンソン病の治療に使われる薬で、吐き気が出やすいことが知られています。ドンペリドンはこの吐き気を抑える目的で併用されることがあります。
小児では、周期性嘔吐症、上気道感染症に伴う消化器症状のほか、抗悪性腫瘍剤投与時が対象となっています。子どもが風邪をひいて吐いてしまうときや、いわゆる自家中毒と呼ばれる状態のときに処方されるのは、この適応に基づくものです。
国内の臨床試験では、慢性胃炎で67.4パーセント、胃下垂症で74.2パーセント、胃切除後症候群で85.7パーセントの有効率が報告されています。またレボドパ製剤投与時の消化器症状に対しては89.1パーセントという結果が示されています。ただしこれらは特定の条件下で実施された試験の数値であり、すべての方に同じ結果が得られることを示すものではありません。
ナウゼリンとドンペリドンの関係
「ナウゼリン」は協和キリンが製造販売する先発医薬品の商品名で、その有効成分がドンペリドンです。処方箋やお薬手帳に「ドンペリドン錠10mg」と記載されている場合、それはナウゼリンと同じ有効成分を含む後発医薬品、いわゆるジェネリック医薬品にあたります。
後発医薬品には製造販売元の名称が付記されることが一般的で、「ドンペリドン錠10mg『サワイ』」「ドンペリドン錠10mg『トーワ』」といった表記を見かけるのはそのためです。カギカッコの中はメーカー名を示しており、有効成分そのものは共通しています。
有効成分と含有量が同じであれば、期待される働きも基本的に同等とされています。ただし添加物や錠剤の大きさ、味などは製品ごとに異なることがあります。飲みにくさを感じた場合や、以前使っていた製品と印象が違うと感じた場合は、薬剤師に相談してみるとよいでしょう。
剤形の種類
ドンペリドンを含む製剤には複数の剤形があり、年齢や症状の状態に応じて使い分けられます。
まず一般的な錠剤があり、5mgと10mgの規格が用意されています。次に口腔内崩壊錠があります。これは唾液で溶けるため水なしで服用でき、吐き気が強くて水を飲むこと自体がつらい場面で使いやすい剤形です。「OD錠」と表記されるのはこの口腔内崩壊錠を指します。
小児向けにはドライシロップがあります。甘味がつけられているため、薬が苦手な子どもでも飲みやすくなっています。
ただし、酸味のある飲み物や食品と混ぜると、苦味が出ることがあります。
そのため、オレンジジュースやスポーツドリンク、ヨーグルトなどと混ぜる際には注意が必要です。
さらに坐剤も用意されています。嘔吐が続いて内服そのものが難しい場合や、小さな子どもで薬を飲ませることが困難な場合に選ばれます。坐剤は10mg、30mg、60mgの3規格があり、年齢に応じて使い分けられます。
ドンペリドンの効果と作用の仕組み
ドンペリドンがどのように吐き気を抑えるのかを理解しておくと、飲むタイミングの意味や副作用の背景も納得しやすくなります。
作用機序
ドンペリドンは、体内にあるドパミンという神経伝達物質の働きをブロックする「抗ドパミン作用」を持つ薬です。作用する場所は主に2か所あるとされています。
ひとつは上部消化管、つまり胃や十二指腸です。胃の壁にあるドパミン受容体は、胃の動きを抑える方向に働きます。ドンペリドンがこの受容体をブロックすることで、抑えられていた胃の動きが回復し、胃の中身が十二指腸へスムーズに送られるようになると考えられています。
もうひとつは、脳の第4脳室の底にある化学受容器引き金帯と呼ばれる部位です。ここは血液中の物質を感知して嘔吐の指令を出す、いわば嘔吐のスイッチにあたる場所です。ドンペリドンはこの部位のドパミン受容体もブロックすることで、嘔吐の指令が出るのを抑えると考えられています。
また、胃の排出能力に対しては、遅れている場合には促進的に、逆に亢進している場合には抑制的に働き、乱れた状態を整える方向に作用することが報告されています。単に動かすのではなく、正常な状態へ近づける薬という位置づけです。
吐き気・嘔吐が抑えられる理由
吐き気には大きく分けて、胃そのものの動きが悪くて起こるものと、脳の嘔吐中枢が刺激されて起こるものがあります。ドンペリドンは、この両方に対して作用する点が特徴です。
食後に胃が重い、少し食べただけで張ってしまう、げっぷが上がってくるといった症状は、胃の内容物が停滞していることが背景にある場合があります。この場合、胃の動きが改善されることで症状の緩和が期待されます。
一方、抗がん剤やパーキンソン病治療薬の影響で起こる吐き気は、薬剤成分が化学受容器引き金帯を刺激することが関係しているとされています。この場合には、脳側での受容体ブロックが働きます。
乗り物酔いのように内耳の平衡感覚の乱れから起こる吐き気については、関与する神経の経路が異なるため、ドンペリドンの効果は期待しにくいとされています。
ドンペリドンは精神安定剤ではない
ドンペリドンについて調べていると、精神安定剤ではないかという疑問を目にすることがあります。これは、ドパミンの働きを抑える薬の多くが統合失調症などの治療に使われる抗精神病薬であることから生じる誤解と考えられます。
ドンペリドンは精神安定剤でも抗精神病薬でもありません。薬効分類は消化管運動改善剤であり、承認されている効能効果も消化器症状に限られています。
その理由の一つが、ドンペリドンが脳へ移行しにくいことです。脳には血液脳関門と呼ばれる仕組みがあり、血液中の物質が脳内へ入るのを制限しています。ドンペリドンはこの血液脳関門を通過しにくいため、中枢神経系への影響が比較的少ないとされています。
一方、吐き気や嘔吐に関わる化学受容器引き金帯(CTZ)は、血液脳関門の影響を受けにくい部位です。そのため、ドンペリドンは脳内へ移行しにくい一方で、CTZに作用して吐き気や嘔吐を抑える効果が期待できます。
また、消化管のドパミンD₂受容体にも作用し、胃や腸の動きを整える働きがあります。
ただし、脳への移行が完全にゼロというわけではありません。まれに神経系の副作用が報告されている点には留意が必要です。
ドンペリドンの効果が出るまでの時間と持続時間
健康な成人にドンペリドン10mgを空腹時に服用してもらった試験では、血液中の濃度が最も高くなるまでの時間はおよそ0.5時間と報告されています。数値の上では比較的すみやかに吸収される薬と言えます。
ただし、血中濃度がピークになる時間と、実際に症状が和らいだと感じる時間は必ずしも一致しません。胃の動きが改善して症状が軽くなるまでには、一般的に30分から1時間程度かかることが多いとされていますが、これには個人差があります。空腹の程度、胃の中の状態、症状の原因によっても変わります。
作用の持続については、血中濃度が半分になるまでの時間が約10時間と報告されています。1日3回、食前に服用するという用法は、この体内動態を踏まえて設定されたものです。
服用してもまったく変化を感じない場合、症状の原因が、ドンペリドンの効果が期待しにくいものである可能性もあります。 数日続けても改善が見られないときは、自己判断で量を増やさず、処方した医療機関に相談してください。
ドンペリドンが向いている人・服用できない人
ドンペリドンは比較的使用実績の長い薬ですが、すべての方に適しているわけではありません。
向いている人
慢性胃炎や胃下垂症、胃の手術を受けた後などで、胃の動きが低下したことによる吐き気や食欲不振、腹部の張り、胸やけ、げっぷといった症状に悩んでいる方が主な対象です。
また、抗がん剤治療やパーキンソン病治療薬の服用にともなって吐き気が生じている方も、医師の判断のもとで対象となります。特にレボドパ製剤との併用では、脳内への移行が少ないという特性上、パーキンソン病の症状そのものを悪化させにくいと考えられており、この点が選択される理由になることがあります。
小児では、周期性嘔吐症や風邪などの上気道感染にともなう嘔吐が対象です。錠剤が飲めない年齢でも、ドライシロップや坐剤という選択肢があります。
服用できない人〈禁忌〉
次の3つに該当する方には投与しないこととされています。
ひとつ目は、ドンペリドンの成分に対して過去にアレルギー症状を起こしたことがある方です。
ふたつ目は、消化管出血、機械的イレウス(腸閉塞)、消化管穿孔がある方です。ドンペリドンは消化管の動きを高める薬であるため、これらの状態では症状を悪化させるおそれがあるとされています。強い腹痛や血便、便やガスがまったく出ないといった症状があるときに自己判断で服用してはいけないのは、この理由によります。
3つ目は、プロラクチン分泌性の下垂体腫瘍がある方です。ドンペリドンの抗ドパミン作用にはプロラクチンというホルモンの分泌を促す働きがあり、症状に影響するおそれがあるためです。
注意が必要な人
禁忌には該当しないものの、慎重な判断が求められる方もいます。
心臓に疾患がある方は、QT延長と呼ばれる心電図の変化が起こるおそれがあるため注意が必要とされています。腎機能や肝機能が低下している方は、薬の排泄や分解が遅れることで副作用が強く出るおそれがあります。
妊娠中または妊娠している可能性のある方には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与します。動物実験では、臨床用量の約65倍の投与量で骨格や内臓の異常などの催奇形作用が報告されています。妊娠中や妊娠の可能性がある場合は、必ず医師に伝えてください。
授乳中の方についても、母乳栄養の利点と治療上の必要性を考慮したうえで、授乳を続けるか中止するかを検討することとされています。
小児では、特に1歳以下の乳児で用量に注意すること、3歳以下の乳幼児では7日以上続けて使用しないこととされています。また脱水状態や発熱時には、投与後の状態に注意することが求められています。小児では神経系の副作用が現れることがあるためです。
高齢の方では、一般に体の機能が低下していることから、減量するなどの配慮が必要とされています。
ドンペリドン錠10mgの飲み方・服用方法
用法・用量
成人では、通常ドンペリドンとして1回10mgを1日3回、食前に服用します。ただしレボドパ製剤を服用している場合には、1回5mgから10mgを1日3回、食前に服用することとされています。年齢や症状により医師が調整することがあります。
小児では、1日あたり体重1kgにつき1.0mgから2.0mgを1日3回に分けて食前に服用します。ただし1日の量として30mgを超えないこと、6歳以上では1日の最高用量を体重1kgあたり1.0mgまでとすることが定められています。子どもの体重によって量が変わるため、きょうだいで薬を融通し合うようなことは避けてください。
いずれの場合も、実際の用法用量は処方箋に記載された指示が優先されます。手元に残っている薬を後日自己判断で使うことのないようにしてください。
食前に飲む理由
ドンペリドンが食前と指定されているのには、大きく2つの理由があると考えられています。
ひとつは、食事によって症状が誘発される前に効果を立ち上げておくためです。食後に吐き気や胃もたれが出やすい方の場合、食事の30分から1時間前に服用しておくことで、食事のタイミングに合わせて胃の動きが整いやすくなると考えられています。
もうひとつは吸収の問題です。ドンペリドンは胃の中が酸性の状態で溶けやすく吸収されやすいという性質を持っています。食事をすると胃酸が薄まったり胃の中の状態が変化したりするため、空腹時に飲んだほうが吸収の面で有利とされています。制酸剤や胃酸を抑える薬との併用に注意が必要とされているのも、同じ理由によるものです。
服用間隔と飲み忘れたとき
1日3回の服用が指示されている場合、食事の間隔に合わせると自然におよそ4時間から6時間程度の間隔になります。指示された回数を守り、極端に間隔を詰めて飲むことは避けてください。
飲み忘れに気づいたときは、次に飲む時間まで十分な間隔があるかどうかで判断します。次の服用時間が近い場合は、忘れた分は飛ばして次の分から通常どおり服用してください。忘れた分を取り戻そうとして2回分を一度に飲むことは、絶対に避けてください。
判断に迷う場合は、処方を受けた医療機関や調剤を受けた薬局に問い合わせるのが確実です。
保管方法
直射日光や高温多湿を避け、室温で保管してください。錠剤はPTPシートから取り出して服用します。シートのまま誤って飲み込むと、鋭利な角が食道の粘膜に刺さり、重い合併症につながるおそれがあることが添付文書で注意喚起されています。
坐剤は製品によって保管条件が異なる場合があるため、薬局で受け取った際の説明に従ってください。また、小さな子どもの手の届かない場所に保管することも大切です。
ドンペリドンの副作用と注意点
ドンペリドンは比較的副作用の少ない薬とされていますが、まったくないわけではありません。国内の臨床試験では、消化器症状を対象とした試験での副作用発現頻度は1.1パーセントと報告されています。
重大な副作用
頻度は低いものの、注意すべき副作用として次のものが挙げられています。
ショックやアナフィラキシーは、発疹、発赤、呼吸困難、顔面や口唇のむくみなどとして現れることがあります。頻度は不明とされていますが、服用後にこれらの症状が出た場合はただちに医療機関を受診してください。
錐体外路症状は、発現頻度0.1パーセント未満とされる神経系の副作用です。首が後ろに反り返る、眼球が上を向いたまま戻らない、腕が伸びたまま曲がらない、手足のふるえ、筋肉のこわばりといった症状が挙げられています。これらが現れた場合は服用を中止し、医師に相談することとされています。
意識障害やけいれんも、頻度不明ながら報告されています。特に小児で発現することがあるとされており、乳幼児への長期連用が制限されているのはこのためです。
肝機能障害や黄疸も報告されています。血液検査の数値の上昇をともなうもので、体のだるさや白目や皮膚が黄色くなるといった変化に気づいた場合は受診の目安となります。
その他の副作用
比較的多く見られるものとして、下痢が0.1パーセントから5パーセント未満の頻度で報告されています。消化管の動きが活発になることと関連していると考えられています。
そのほか0.1パーセント未満の頻度で、便秘、腹痛、腹部の圧迫感、口の渇き、胸やけ、悪心、嘔吐、腹部膨満感といった消化器症状が挙げられています。吐き気を抑える薬ですが、副作用として悪心や嘔吐が報告されています。服用後に症状が悪化した場合は、医師や薬剤師に相談してください。
内分泌系では、女性化乳房、プロラクチンの上昇、乳汁分泌、乳房の張り、月経異常が報告されています。これはドンペリドンの抗ドパミン作用がプロラクチンの分泌を促すことによるものと考えられています。妊娠していないのに乳汁が出る、生理周期が乱れるといった変化があった場合は、服用中の薬との関連を医師に伝えてください。
循環器系では心悸亢進のほか、頻度不明としてQT延長が挙げられています。QT延長とは心電図上の指標の変化を指し、不整脈のリスクと関連するとされています。
そのほか、眠気、めまい、ふらつき、動揺感、口内のあれ、発汗、じん麻疹、発疹、かゆみなどが報告されています。眠気やめまいが出ることがあるため、服用中は自動車の運転や危険をともなう機械の操作に注意することとされています。
「突然死」といわれる理由
ドンペリドンについて検索すると「突然死」という言葉が関連して表示されることがあり、不安に感じる方もいます。この背景を正確に理解しておくことが大切です。
「その他の注意」の項には、外国において本剤による重篤な心室性不整脈および突然死が報告されていること、特に高用量を投与している患者や高齢の患者でこれらのリスクが増加したとの報告があることが記載されています。
この記載が禁忌でも重大な副作用でもなく、参考情報として置かれた項目であるという点です。また報告の多くは、国内で承認されている量を大きく上回る高用量の使用や、注射剤としての使用に関するものとされています。日本で承認されている用法用量は1回10mgを1日3回であり、この範囲での使用が前提となっています。
リスクがゼロというわけではありません。だからこそ、心疾患のある方への注意が明記され、心電図に影響しうる薬との併用に注意が必要とされ、高齢者では減量が推奨されているのです。決められた量を守ること、他に飲んでいる薬をすべて医師や薬剤師に伝えることが、このリスクを避けるための現実的な対応になります。
副作用が出たときの対処
下痢や腹痛といった消化器症状が軽度の場合でも、続くようであれば医師に伝えてください。排便の回数や水分の摂取量をメモしておくと、診察時に状況を伝えやすくなります。
眠気やふらつきが出た場合は、運転や高所での作業を避け、立ち上がる際にゆっくり動くなどして転倒を防いでください。症状が続くときは、量の調整や別の薬への変更が検討されることがあります。
首や眼球、手足の異常な動き、意識がはっきりしない、けいれんといった症状が現れた場合は、様子を見ずにすみやかに医療機関を受診してください。
なお、適正に使用したにもかかわらず重い健康被害が生じた場合には、医薬品副作用被害救済制度による給付の対象となることがあります。制度の詳細は医薬品医療機器総合機構の情報を参照してください。
併用に注意する薬
ドンペリドンに併用禁忌の薬は設定されていませんが、併用注意として複数の薬剤が挙げられています。
まず、フェノチアジン系やブチロフェノン系の精神神経用剤、ラウオルフィアアルカロイド製剤との併用では、内分泌機能の調節異常や錐体外路症状が現れやすくなるとされています。これらはいずれもドパミンに関連する作用を持つためです。
ジギタリス製剤との併用では、ジギタリスが効きすぎているときのサインである吐き気や食欲不振がドンペリドンによって隠れてしまう可能性が指摘されています。
抗コリン薬との併用では、互いの作用が打ち消し合ってドンペリドンの効果が弱まることがあります。また制酸剤、H2受容体拮抗剤、プロトンポンプ阻害剤といった胃酸を抑える薬とは、胃の中の酸性度が下がることでドンペリドンの吸収が妨げられるおそれがあるため、服用する時間をずらすなどの配慮が必要とされています。
そしてCYP3A4という代謝酵素を阻害する薬、具体的にはイトラコナゾールやエリスロマイシンなどとの併用では、ドンペリドンの血中濃度が上昇します。実際、イトラコナゾールとの併用で血中濃度の指標が約3倍に上昇したという報告や、エリスロマイシンとの併用でQT延長が認められたという報告があります。
なお、解熱鎮痛薬として広く使われるアセトアミノフェンやロキソプロフェン、経口避妊薬などは、添付文書の併用注意には挙げられていません。ただし記載がないことと、自己判断で併用してよいことは同じではありません。持病や他の服用薬との組み合わせによって判断は変わるため、お薬手帳を提示したうえで薬剤師に確認することをおすすめします。
ドンペリドンと他の吐き気止めの違い
吐き気止めにはいくつかの種類があり、それぞれ作用する場所や得意とする症状が異なります。
プリンペランとの違い
最も比較されることが多いのが、メトクロプラミドを有効成分とするプリンペランです。両者はどちらも抗ドパミン作用によって吐き気を抑える薬で、消化管の動きを改善する点でも共通しています。
脳への移行のしやすさです。メトクロプラミドは血液脳関門を通過しやすいのに対し、ドンペリドンは通過しにくいという性質を持っています。この違いから、メトクロプラミドのほうが眠気やだるさ、錐体外路症状といった中枢神経系の副作用が出やすいとされています。
一方で、脳に届きやすいことが利点になる場面もあります。脳の中枢が関与する吐き気に対しては、メトクロプラミドのほうが適していると判断されることがあります。
また、パーキンソン病の治療を受けている方では扱いが分かれます。メトクロプラミドは脳内のドパミンの働きを抑えるため、パーキンソン病の症状を悪化させるおそれがあるとされています。この点で、脳内への移行が少ないドンペリドンが選ばれることがあります。
どちらが優れているという単純な比較ではなく、症状の原因や患者さんの状態によって使い分けられる薬という理解が適切です。
ガスモチンとの違い
モサプリドを有効成分とするガスモチンも、消化管の動きを改善する薬としてよく処方されます。ただし作用の仕組みが異なり、モサプリドはセロトニンの受容体に働きかけることで消化管の運動を促します。
ドンペリドンが持つ嘔吐中枢への作用は、モサプリドにはありません。そのため吐き気そのものを抑える力という点ではドンペリドンが選ばれやすく、慢性的な胃もたれや便通も含めた消化管全体の動きを整えたい場合にはモサプリドが選ばれやすい傾向があります。抗ドパミン作用を持たないため、錐体外路症状やプロラクチン上昇といった副作用の心配が少ない点も特徴です。
トラベルミンなど酔い止めとの違い
乗り物酔いに用いられる薬の多くは、抗ヒスタミン薬や抗コリン薬を主成分としています。これらは内耳の平衡感覚の乱れが脳に伝わる経路に作用するもので、ドンペリドンとは働きかける場所がまったく異なります。
そのため、乗り物酔いの予防や改善を目的とする場合、ドンペリドンは第一に選ばれる薬ではありません。ドンペリドンの承認された効能効果にも乗り物酔いは含まれていません。乗り物酔いへの対策を考えている場合は、その目的に合った薬を薬剤師に相談するのが適切です。
ドンペリドンは市販で買える?入手方法
同成分の市販薬はない
ドンペリドンと同じ有効成分を含む一般用医薬品、いわゆる市販薬は販売されていません。ドラッグストアや薬局の店頭で、処方箋なしにドンペリドンの錠剤を購入することはできない状況です。
これは、ドンペリドンが医師の診断と処方を前提とした医療用医薬品として位置づけられているためです。禁忌に該当する状態かどうかの見極めが必要であり、また吐き気という症状の裏に別の疾患が隠れている可能性もあることから、医師の判断を経る仕組みになっています。
代わりに使える市販薬の考え方
市販薬で対応を考える場合、まず押さえておきたいのは、ドンペリドンと同じ成分の市販薬は存在しないという点です。似た症状に用いられる市販薬はありますが、成分も作用の仕組みも異なります。
胃もたれや食後の重さが中心であれば、消化酵素や健胃生薬を配合した胃腸薬が選択肢になります。胸やけや胃の痛みが強い場合には、胃酸を抑えるタイプの製品が用いられることがあります。乗り物酔いによる吐き気であれば、抗ヒスタミン薬を含む酔い止め薬が該当します。
どれを選ぶべきかは症状の原因によって変わるため、店頭で薬剤師や登録販売者に症状を具体的に伝えて相談してください。そのうえで、市販薬を数日使っても改善しない場合、吐き気に加えて強い腹痛や発熱、血便、体重減少をともなう場合、症状が繰り返し起こる場合には、市販薬での対応を続けず医療機関を受診することが大切です。
個人輸入・通販のリスク
インターネット上には、海外から医薬品を取り寄せる個人輸入代行を名乗るサイトが存在します。しかし、こうした経路での入手には無視できないリスクがあります。
まず、届いた製品が本物である保証がありません。有効成分が入っていない、量が表示と異なる、不純物が混入しているといった偽造医薬品の問題が国内外で報告されています。また、保管や輸送の環境が適切だったかを確認する手段もありません。
さらに重要なのが、健康被害が生じた場合の補償です。医薬品副作用被害救済制度は、国内で適正に使用された医薬品による健康被害を対象としており、個人輸入した医薬品はその対象外となります。万一重い副作用が起きても、公的な救済を受けられません。
市販薬を使用する場合でも、禁忌に該当しないか、ほかの薬との飲み合わせに問題がないかを確認することが大切です。 ドンペリドンには消化管出血や腸閉塞といった禁忌が設定されており、これらを自分で判断することは困難です。
医療機関・オンライン診療での処方
ドンペリドンの処方を希望する場合は、内科や消化器内科を受診するのが一般的です。子どもの症状であれば小児科が対応します。
近年はオンライン診療に対応する医療機関も増えており、スマートフォンやパソコンを通じて医師の診察を受け、薬を配送してもらえる仕組みが利用できるようになっています。通院の負担を減らせる点や、吐き気が強くて外出が難しい状況でも相談しやすい点は利点と言えます。
ただし、オンライン診療では触診や検査ができないため、症状によっては対面での受診が必要になることがあります。 また医師の判断により、必ずしも希望した薬が処方されるとは限りません。強い腹痛をともなう、吐いたものに血が混じる、意識がもうろうとする、水分もとれない状態が続くといった場合は、オンラインではなく速やかに医療機関を受診してください。
ドンペリドンに関するよくある質問
ドンペリドンは何時間あけて飲めばよいですか。
1日3回食前という用法であれば、食事の間隔に合わせるとおおむね4時間から6時間程度あくことになります。血中濃度が半分になるまでの時間が約10時間と報告されていることからも、極端に間隔を詰めて飲むことは避けてください。具体的な間隔については処方時の指示に従ってください。
食後に飲んでしまいましたが大丈夫ですか。
1回飲むタイミングがずれたことで直ちに問題が生じるとは考えにくいものの、食後は胃の中の状態が変化しているため、吸収の面では空腹時より不利になるとされています。効果を感じにくい可能性はありますが、慌てて追加で飲むことはせず、次回から食前に戻してください。心配な場合は薬剤師に相談してください。
ドンペリドンで眠くなることはありますか。
その他の副作用として眠気、めまい、ふらつきが挙げられています。頻度は高くありませんが、服用中は自動車の運転や危険をともなう機械の操作に注意することとされています。症状が続く場合は医師に相談してください。
二日酔いや乗り物酔いに使えますか。
ドンペリドンの承認された効能効果に、二日酔いや乗り物酔いは含まれていません。手元にある薬を自己判断でこれらの目的に使うことは避けてください。それぞれの症状に適した対処法があるため、薬剤師や医師に相談することをおすすめします。
解熱鎮痛薬と一緒に飲んでも問題ありませんか。
アセトアミノフェンやロキソプロフェンなどの解熱鎮痛薬は、ドンペリドンの添付文書で併用注意には挙げられていません。ただし、持病やほかに服用している薬によって判断が変わることがあるため、医師や薬剤師に確認してください。
飲んでも吐き気が治まらないときはどうすればよいですか。
症状の原因がドンペリドンの得意とする範囲外にある可能性があります。自己判断で量を増やしたり回数を追加したりせず、処方を受けた医療機関に相談してください。特に、強い腹痛や発熱、血便をともなう場合、水分がとれない状態が続く場合は早めの受診が必要です。
ドンペリドンの効果と副作用に関するまとめ
ドンペリドンは、胃や腸の動きをよくし、吐き気や嘔吐を抑える薬です。
胃の内容物を先へ送りやすくする働きに加えて、吐き気や嘔吐を引き起こす脳の部位にも作用します。
そのため、慢性胃炎などによる吐き気や胃の不快感、食欲不振、腹部膨満などに用いられます。また、抗がん剤やレボドパ製剤による吐き気や嘔吐にも使用されます。
血液脳関門を通過しにくいという性質から中枢神経系への影響は比較的少ないとされていますが、まれに錐体外路症状などの神経系の副作用が報告されており、精神安定剤の類ではないものの完全に無関係というわけでもありません。消化管出血や腸閉塞、プロラクチン分泌性の下垂体腫瘍がある方には投与しないこととされており、心疾患や腎機能障害、肝機能障害のある方、妊娠中や授乳中の方、小児、高齢者では慎重な判断が求められます。
同じ有効成分を含む市販薬は販売されておらず、入手には医師の診察が必要です。個人輸入は偽造品のリスクに加え、健康被害が起きた際の公的な救済制度の対象外となるため避けるべき経路と言えます。
吐き気や胃の不快感が続く場合、その背景には検査が必要な疾患が隠れていることもあります。手元にある薬を自己判断で服用せず、医療機関に相談してください。
参照リンク
-
くすりのしおり ナウゼリン錠10(協和キリン)
-
KEGG MEDICUS 医療用医薬品 ナウゼリン(ナウゼリン錠5 他)
-
医薬品医療機器総合機構 医薬品副作用被害救済制度