女性用薄毛治療薬「スピロノラクトン」とは?効果や副作用、正しい服用方法

「スピロノラクトンは本当に薄毛に効果があるの?」と疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
本記事では、海外で女性の薄毛治療に応用されることがあるスピロノラクトンについて、その仕組みや期待される効果に関する報告を解説します。なお、日本国内では薄毛治療薬としては承認されていません。
※本記事では、日本国内で薄毛治療薬としては承認されていない医薬品(スピロノラクトン)の適応外使用について言及しています。治療を希望される場合は、必ず医師の診察を受け、自由診療の範囲で医師の判断に基づいて行ってください。
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スピロノラクトンの女性の薄毛(FAGA)改善への効果

スピロノラクトンは本来、高血圧治療などに用いられる利尿薬ですが、抗アンドロゲン作用を持つことから、海外では女性の薄毛治療に使用されることがあります。ただし日本では薄毛治療目的で承認されていません。
具体的には、抜け毛の原因とされるジヒドロテストステロン(DHT)が毛根に作用するのを妨げることで、脱毛の進行を抑える働きがあると報告されています。
特に、FAGAは女性ホルモンの低下により男性ホルモンの影響が強まり、薄毛が進むと考えられています。そのため、スピロノラクトンが働く可能性があります。
本来の利尿薬としての働きに加え、ホルモンバランスが関与する女性の薄毛治療に応用されることがありますが、日本では未承認です。
女性の薄毛(FAGA)とは?
FAGAとは、女性特有の男性型脱毛症で「Female Androgenetic Alopecia」の略です。
近年ではFPHL(Female Pattern Hair Loss)とも呼ばれ、女性の薄毛の代表的な疾患とされています。
主な要因は、更年期におけるホルモンバランスの乱れやストレスですが、栄養不足や遺伝など複数の要素も影響しています。
FAGAは更年期に多く見られるものの、20代や30代の若年層でも発症することがあります。早期に治療を開始することで、症状の進行を抑えられる可能性があります。
FAGAの症状と特徴
FAGAの主な原因は、ホルモンバランスの乱れやヘアサイクルの異常によって髪の成長が妨げられることにあります。
男性型脱毛症とは異なり、生え際の後退は目立たず、全体的に均一に薄くなる傾向があります。
具体的な症状は、下記のとおりです。
症状 |
特徴 |
頭部全体の毛が薄くなる |
髪のボリュームが減り、頭皮が透けて見える |
抜け毛が増える |
一日に100本以上の抜け毛やヘアケア時に抜け毛が目立つ |
髪の毛が細くなる |
成長しきらない細い髪が抜け、髪全体のボリュームが低下 |
薄毛の兆候に気づいたら、早めに専門医に相談することで進行を抑えられる可能性があります。
FAGAの進行パターン
FAGAは進行性の脱毛症で、「ルードヴィヒ分類」という3段階の進行パターンで評価されます。
分類 |
症状の特徴 |
Ⅰ型 |
頭頂部の髪が細くなり分け目が目立つ |
Ⅱ型 |
頭頂部全体が薄くなり地肌が見える |
Ⅲ型 |
頭頂部の薄毛が進行し地肌が露出する |
FAGAを発症すると、通常2~6年かけて成長する髪のヘアサイクルがホルモンの影響で乱れ、細く短い髪しか生えなくなります。
その結果、髪全体が細く痩せ、ボリュームが減ることで頭皮が透けて見えるようになります。
薄毛の進行を防ぐには、早めに気づいて専門医に相談し、診断と治療を受けることが大切です。
スピロノラクトンが薄毛に効く理由
スピロノラクトンには男性ホルモンの働きを抑える作用があるとされ、海外では女性の薄毛治療に応用されることが報告されています。ただし、日本国内では薄毛治療目的での承認はありません。
本来は高血圧や心不全の治療に使われる利尿薬で、体内の水分とナトリウムを排泄しながらカリウムを保持する役割を担ってきました。
利尿作用は腎臓でアルドステロンの働きを抑え、血圧の低下やむくみの改善に寄与します。
その後、男性ホルモンの一種であるジヒドロテストステロン(DHT)が毛根を萎縮させる働きを抑える作用があることが分かりました。
その効果が注目されるようになり、海外では女性の薄毛治療に応用されるケースも報告されています。
また、これまでの治療だけでは十分な効果が得られない場合に、補助的に使用されることもあります。
スピロノラクトンとは

「スピロノラクトン」はもともと利尿薬で、「アルダクトン」の後発品として高血圧や浮腫などの治療に広く使われてきました。
ナトリウムや水分の排泄を促しながら、カリウムを保持する「カリウム保持性利尿薬」として、高血圧や心不全の治療に広く処方されてきた薬です。
その後、男性ホルモン(アンドロゲン)の働きを抑える作用があることが分かり、毛根の萎縮を防ぐ薬としても注目されるようになりました。
つまり、もともとは循環器系疾患の薬でしたが、新たに薄毛治療への応用も検討されるようになったのです。
日本ではこの効能については未承認のため、実際に使用される場合は、医師の判断によって自由診療として扱われることがあります。
基本情報
スピロノラクトンの基本情報は、下記のとおりです。
販売名 |
スピロノラクトン錠25mg |
製薬会社 |
ニプロ、辰巳化学、鶴原製薬、東和薬品、キョーリンリメディオ、日医工 |
効果・効能 |
・高血圧症(本態性・腎性など) ・心不全に伴う浮腫(心性浮腫)、腎疾患や肝疾患による浮腫、特発性浮腫 |
用法・用量 |
添付文書上は成人に1日50〜100mgと記載されていますが、実際の用量は必ず医師の判断に基づき決定されます。 年齢や症状に応じて調整されることがあり、原発性アルドステロン症以外では他の薬剤と併用されるケースが多いです。 |
注意点 |
・長期使用では高カリウム血症など電解質異常の可能性があるため、定期的な検査が必要です。 ・降圧作用によりめまいが起こることがあり、自動車運転や高所作業などは注意してください。 ・夜間の排尿を避けたい場合は、午前中に服用するのが望ましいとされています。 |
副作用 |
電解質異常、急性腎不全、中毒性表皮壊死融解症、乳房の腫れや女性化乳房、性欲の低下、勃起障害、多毛、月経不順、無月経、閉経後出血、声の低音化など |
併用禁忌 |
タクロリムス(プログラフ) エプレレノン(セララ) エサキセレノン(ミネブロ) ミトタン(オペプリム) |
注意が必要な人 |
・重い動脈硬化症がある方、減塩療法中の方 ・腎機能障害(急性腎不全や重度の腎障害)を持つ方 ・肝機能障害がある方 ・妊娠中・授乳中の方、小児、高齢者 |
参照: https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/medley-medicine/prescriptionpdf/530100_2133001F1654_1_07.pdf
有効成分・添加剤
スピロノラクトンの有効成分および添加剤は、下記のとおりです。
有効成分(1錠中) |
日本薬局方 スピロノラクトン 25mg |
添加剤 |
バレイショデンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、乳糖水和物、ヒドロキシプロピルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸 |
参照: https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/medley-medicine/prescriptionpdf/530100_2133001F1654_1_07.pdf
作用機序
スピロノラクトンの基本的な作用は、体内の塩分や水分の調整を担うアルドステロンの働きを抑えることです。
その結果、体内の余分な水分や塩分が排泄され、むくみや血圧の改善につながります。
さらに、カリウムを保ちながら効果を発揮できる点や、他の薬と併用して使える点も、スピロノラクトンの大きな特徴です。
効能・効果
スピロノラクトンは利尿剤に留まらず、多岐にわたる疾患の治療に用いられています。
主な適応例は、以下のとおりです。
高血圧症(本態性・腎性など)
各種浮腫(心性・腎性・肝性・特発性・悪性腫瘍由来・栄養失調性)
悪性腫瘍に伴う腹水
原発性アルドステロン症の診断および症状改善
心臓や腎臓、肝臓など幅広い領域で治療効果を発揮し、特に浮腫や高血圧に対する第一選択薬の一つとして重要な役割を果たしています。
スピロノラクトンのその他の効果

スピロノラクトンは、もともと利尿剤として開発され、高血圧やむくみの改善などに広く用いられてきました。
しかし近年では、体内の水分調整やホルモン作用に関わる特性を活かし、さまざまな疾患や症状への効果が注目されています。
スピロノラクトンの効果について、順に解説していきます。
利尿作用
高血圧症への効果
浮腫(むくみ)への効果
原発性アルドステロン症への効果
ニキビ治療薬としての使用(国内未承認)
利尿作用
体内に余分な水分が溜まると、むくみや血圧上昇の原因となりますが、スピロノラクトンは水分貯留を改善できる点で有効です。
腎臓で働くアルドステロンの作用を抑え、ナトリウムと水分の再吸収を防ぐことで尿の排出を促すためです。
心不全や肝疾患に伴うむくみ、高血圧の治療などに使われています。尿の量を増やすことで、血圧やむくみの改善につながります。
さらに、カリウムを保持する作用があるため、他の利尿薬と併用することで低カリウム血症やこむら返りの予防にも役立ちます。
高血圧症への効果
スピロノラクトンはアルドステロン受容体をブロックすることで、高血圧の改善に役立ちます。
具体的な効果は、下記の通りです。
過剰なナトリウムや水分の排泄を促す
血圧の低下を助ける
カリウムの排泄を抑えやすくする
アルドステロンは体内でナトリウムを再吸収し、カリウムを排泄する働きがあります。スピロノラクトンはこの作用を抑えることで、余分なナトリウムと水分が体外に排泄されます。
その結果、血液量が減少して血圧が下がり、心臓や血管への負担も軽減されます。
また、カリウムの排泄を抑える作用もあり、血中カリウム濃度の維持にもつながります。
浮腫(むくみ)への効果
体内に水分が過剰にたまることで生じる浮腫は、心不全や肝硬変、ネフローゼ症候群などでよく見られる症状です。
スピロノラクトンは効果的に浮腫の症状改善が期待でき、主な適応例は下記のとおりです。
心不全時の体液貯留
肝硬変による腹水やむくみ
ネフローゼ症候群の高度浮腫
腎臓でナトリウムと水分の排泄を促進しつつ、カリウムの排泄を抑える作用を持つため、カリウム欠乏による不整脈リスクを抑えられます。
特に高齢者や心不全患者において、このカリウム保持性は重要な利点となります。
原発性アルドステロン症への効果
原発性アルドステロン症では、副腎の異常によって起こる高血圧を手術で治療しないこともあります。そのため、スピロノラクトンなどのアルドステロン拮抗薬による薬物療法が中心となります。
スピロノラクトンは、アルドステロン受容体を抑えることで、体に塩分や水分をため込むのを防ぎ、余分なものを体の外に排出する働きがあります。また、カリウムの排泄を抑える作用もあるため、低カリウムによる副作用リスクを減らすことができます。
このような作用により、原発性アルドステロン症に伴う高血圧や浮腫、体液貯留などの症状の改善が期待できます。
ニキビ治療薬としての使用(国内未承認)
スピロノラクトンは、男性ホルモンの作用を抑えることで皮脂の過剰分泌を抑制し、難治性の女性にきびの改善に役立ちます。
特に以下のような症状のある女性に適しています。
成人以降に発症または悪化するにきび
生理周期に応じてにきびの悪化と改善を繰り返す
あごやフェイスラインに治りにくい大きめのにきび
胸や背中など広範囲に治りにくいにきび
顔の皮脂が多い
軽度~中程度の多毛を伴う
他の治療で効果が不十分だった場合
なお、男性ホルモンの作用を抑制するため、男性は適応外となります。
スピロノラクトンの服用方法

スピロノラクトンの効果を最大限に引き出すためには、適切な用法・用量で服用することが重要です。
また、利尿作用やホルモンへの影響を考慮し、服用のタイミングにも注意が必要です。
ここでは、下記の点について詳しく解説します。
用法・用量
服用タイミングと注意点
服用期間の目安
薄毛症状の改善を実感するには、一定の期間の服用が必要なため、短期間での変化を期待せず継続的に服用しましょう。
用法・用量
成人におけるスピロノラクトンの基本的な服用量は、1日50~100mgを経口で分割して投与することです。
用量は、年齢や症状に応じて医師が調整します。
ポイントとしては以下の通りです。
成人の標準投与量:1日50~100mg、分割経口投与
年齢や症状に応じて増減可能
他剤との併用で効果を高める場合あり
服用タイミングと注意点
スピロノラクトンは利尿作用があるため、服用時間によって生活への影響が出やすい薬です。
特に夕食後に服用すると、夜間の排尿が増えて睡眠の質が低下する可能性があるため、朝や昼に服用することが推奨されます。
また、症状や体調に応じて医師が用量を調整する場合があるため、自己判断で増減せず指示された量を守ることが重要です。
正しいタイミングで服用することで、効果を最大限に引き出しつつ副作用のリスクも抑えられます。
服用期間の目安
海外の臨床報告では、一定期間で効果を感じる例もあります。ただし、個人差が大きく、日本での承認データはありません。
スピロノラクトンは、男性ホルモンを抑えることで髪のヘアサイクルを整え、薄毛の予防や改善にに役立つと考えられています。
ただし、即効性はないため、効果を実感するまでには一定の期間が必要です。
ヘアサイクルとは髪が生え替わる周期のことで、1本1本で異なり、平均すると2~6年ほどかかります。
髪が一斉に生えそろうわけではなく、個人差も大きいため、焦らず服用を継続することが薄毛改善への第一歩となります。
副作用とリスク

スピロノラクトンの効果の裏側には、副作用やリスクも存在します。
副作用にはいろいろな種類があります。重いものでは電解質の異常や腎機能への影響があり、軽いものでは日常生活に影響する副作用も報告されています。
さらに、ホルモン受容体に作用する特性上、男女で副作用の現れ方に違いがあるのも特徴です。
リスクを理解することで、安心して治療を続けるために大切です。
以下では、重大な副作用から男女別の特徴的な副作用まで詳しく解説していきます。
重大な副作用
主な副作用
性ホルモン関連の副作用(男女別)
重大な副作用
スピロノラクトンを服用する際は、まれに重大な副作用が現れることがあります。
重大な副作用の例は以下のとおりです。
電解質異常(高カリウム血症、低ナトリウム血症、代謝性アシドーシス等)
急性腎不全(電解質異常を伴う場合あり)
重篤な皮膚障害(中毒性表皮壊死融解症/TEN、皮膚粘膜眼症候群/Stevens-Johnson症候群)
重篤な皮膚反応:TEN、SJS
参照: https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/medley-medicine/prescriptionpdf/530100_2133001F1654_1_07.pdf
重大な副作用として、電解質の異常が起こることがあります。具体的には、高カリウム血症や低ナトリウム血症、代謝性アシドーシスなどで、不整脈・全身のだるさ・力が入らないといった症状を伴う場合があります。
また、急性腎不全を発症することもあり、この場合も電解質異常を伴うことがあります。
さらに、中毒性表皮壊死融解症(TEN)や皮膚粘膜眼症候群(SJS)といった、皮膚や粘膜に重い反応を起こすことも報告されています。
これらの副作用は頻度が明確ではありませんが、体に異常を感じた場合は服用をやめ、すぐに医療機関を受診することが大切です。
主な副作用
スピロノラクトンの主な副作用について、以下にまとめました。
部位 |
主な副作用 |
内分泌 |
女性型乳房、乳房腫脹、性欲減退、陰萎、多毛、月経不順、無月経、閉経後の出血、音声低音化、乳房腫瘤、乳房痛 |
過敏症 |
発疹、蕁麻疹 そう痒 |
精神神経系 |
眩暈、頭痛、四肢しびれ感、神経過敏、うつ状態、不安感、精神錯乱、運動失調、傾眠 |
肝臓 |
AST上昇、ALT上昇、γ-GTP上昇、Al-P上昇、LDH上昇、ビリルビン上昇 |
腎臓 |
BUN上昇 |
消化器 |
食欲不振、悪心・嘔吐、口渇、下痢、便秘 |
血液 |
白血球減少、血小板減少 |
その他 |
倦怠感、心悸亢進、発熱、肝斑、筋痙攣、脱毛 |
参照: https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/medley-medicine/prescriptionpdf/530100_2133001F1654_1_07.pdf
よく見られる副作用としては、乳房の変化や月経不順などがあります。一方で、精神症状や肝機能の変化といった副作用が起こることもまれに報告されています。
副作用の中には重症化するものも含まれるため、気付いた時点で医師に相談することが大切です。
女性ホルモン関連の副作用
スピロノラクトンの長期使用では、性ホルモンに関連した副作用に注意が必要です。
抗アンドロゲン作用は海外でFAGA改善に用いられることがあり、日本でも自由診療で医師が使用する場合がありますが、全身的に作用することでホルモンバランスに影響を与える可能性があります。
副作用のリスクは高用量・長期使用で増加しますが、低用量でも個人差により症状が現れることがあります。
そのため、治療中は定期的に医師の診察を受け、体調や性機能の変化、生理周期の変化などを報告し、必要に応じて用量調整や薬剤変更を検討してもらうことが重要です。
以下では、男女別に発現しやすい副作用について詳しく解説します。
女性に多い副作用
女性に多いスピロノラクトンの副作用として、月経不順や無月経が起こることがあります。これは、スピロノラクトンが性ホルモンの働きを妨げるためと考えられています。特に長期間使用すると、生理周期の乱れが出やすくなることがあります。
なお、低用量ピルとの併用で改善が見られる場合もあるため、服用中に生理周期の変化が見られた場合は医師への相談することが大切です。
男性に多い副作用
男性に多いスピロノラクトンの副作用として、女性化乳房があります。乳房の違和感や腫れなどの症状が出ることがあり、これはホルモンバランスの変化によるものと考えられています。長期間服用していて乳房に違和感を感じた場合は、早めに医師へ相談することが大切です。
特定の背景を有する患者に関する注意

スピロノラクトンを服用できない、または注意が必要な人は以下のとおりです。
区分 |
対象患者 |
理由 |
禁忌 |
無尿又は急性腎不全の患者 |
腎機能を更に悪化、高カリウム血症を誘発又は増悪させるおそれ |
高カリウム血症の患者 |
高カリウム血症を増悪させ るおそれ |
|
アジソン病の患者 |
高カリウム血症のおそれ |
|
タクロリムス、エプレレノン、エサキセレノン又は ミトタンを投与中の患者 |
高カリウム血症のおそれ |
|
本剤に対し過敏症の既往歴のある患者 |
物質に対して過剰に反応するおそれ |
|
服用禁止 |
急性腎不全の患者 |
腎機能悪化や高カリウム血症を誘発するおそれがある |
重篤な腎障害のある患者 |
高カリウム血症のリスクが高い |
|
妊婦・妊娠の可能性がある女性 |
治療上の有益性が危険性を上回る場合にのみ投与 |
|
小児・乳児 |
電解質バランスが崩れやすく、安全性未確立 |
|
注意して投与 |
重篤な冠動脈硬化症または脳動脈硬化症のある患者 |
急激な利尿で血栓塞栓症を誘発する可能性 |
授乳婦 |
活性代謝物が母乳中に移行するため注意が必要 |
|
肝機能障害のある患者 |
高カリウム血症のリスクがある |
|
減塩療法中の患者 |
脱水や低ナトリウム血症が起こりやすい |
|
高齢者で腎・肝機能低下の患者 |
急激な利尿や高カリウム血症のリスクが高く慎重投与が必要 |
参照: https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/medley-medicine/prescriptionpdf/530100_2133001F1654_1_07.pdf
急性腎不全や重篤な腎障害のある患者は、腎機能悪化や高カリウム血症のリスクが高く、投与は避けるべきです。
また、小児・乳児も安全性が確立されていないため原則投与は制限されます。
妊娠・授乳中の使用
妊娠中や授乳中の女性がスピロノラクトンを使用する場合は、慎重な判断が必要です。
妊婦の方は、胎児への影響の可能性があるため、基本的には使用できません。治療によるメリットがリスクを上回ると医師が判断した場合にのみ、投与されることがあります。
一方、授乳婦は、スピロノラクトンの主要な活性代謝物であるカンレノ酸が母乳中に移行することが確認されています。
そのため、母体にとっての治療上の有益性と母乳による栄養の利点を比較し、授乳の継続または中止を検討する必要があります。
医師と相談のうえ、それぞれの状況に応じて判断することが重要です。
併用禁忌と併用注意

スピロノラクトンは有効な治療薬ですが、他の薬と併用すると効果が強まりすぎたり、副作用のリスクが高まることがあります。
特に、血清カリウム値の上昇や腎機能への影響は深刻な問題を引き起こす可能性があるため、併用する薬剤については、十分な注意が必要です。
ここでは、絶対に併用してはいけない「併用禁忌」と、医師の監督下で注意して使用すべき「併用注意」に分けて解説します。
併用禁忌
スピロノラクトンは特定の薬剤との併用によって重大なリスクが生じるため、以下の薬剤とは併用できません。
併用禁忌薬の具体例は、下記のとおりです。
薬剤名 |
臨床症状・措置方法 |
機序・危険因子 |
タクロリムス(プログラフ) エプレレノン(セララ) エサキセレノン(ミネブロ) |
高カリウム血症の可能性 |
相加・相乗作用により血清カリウム値が上昇する |
ミトタン(オペプリム) |
ミトタンの作用を阻害 |
スピロノラクトンがミトタンの薬効を阻害する報告あり |
参照: https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/medley-medicine/prescriptionpdf/530100_2133001F1654_1_07.pdf
併用注意
スピロノラクトンの併用注意薬の具体例は、下記のとおりです。
薬剤名等 |
起こりうる影響や注意点 |
作用やリスク要因 |
降圧剤 ・ACE阻害剤 ・カルシウム拮抗剤 ・β-遮断剤 ・利尿降圧剤等 |
血圧が下がりすぎる可能性があるため、用量調整が必要。 |
スピロノラクトンと作用が重なり、降圧効果が強く出るため。 |
カリウム製剤 ・塩化カリウムグルコン酸カリウム ・アスパラギン酸 ・カリウム等 ACE阻害剤 ・カプトプリル ・エナラプリル ・リシノプリル等 アンジオテンシン Ⅱ受容体拮抗剤 ・ロサルタンカリウム ・カンデサルタン ・シレキセチル ・バルサルタン等 アリスキレン カリウム保持性利尿剤 ・トリアムテレン ・カンレノ酸カリウム シクロスポリン ボクロスポリン ドロスピレノン |
高カリウム血症が起こるおそれがあるため、血中カリウムの定期的なチェックが必要。 |
スピロノラクトンと一緒に使用すると、カリウムが溜まりやすくなる。 特に腎障害患者や高齢者はリスクが高まる。 |
フィネレノン |
高カリウム血症のリスクがさらに高まるため、必要な場合のみ使用。 併用する場合は、カリウムを頻繁に測定することが推奨される。 |
スピロノラクトンと一緒に使用すると、カリウムが溜まりやすくなる。 特に腎障害患者や高齢者はリスクが高まる。 |
ノルエピネフリン |
血管を収縮させる作用が弱くなる可能性がある。 |
完全には解明されていないが、スピロノラクトンが心血管反応性を低下させる。 特に麻酔施行患者は注意が必要。 |
乳酸ナトリウム |
乳酸ナトリウムのアルカリ化作用が弱まることがある。 |
スピロノラクトンによりカリウムが増え、酸性化が進み、中和作用と拮抗するため。 |
塩化アンモニウム コレスチラミン |
代謝性アシドーシス(体が酸性に傾く状態)を起こす可能性。 |
スピロノラクトンと作用が重なり、酸性状態が悪化するため。 |
ジゴキシン メチルジゴキシン |
血中ジゴキシン及びメチルジゴキシン濃度が上がることがある。 |
腎臓からの排泄が抑えられるため血中濃度が上昇。 |
ジギトキシン |
効果が強くなったり弱くなったりする可能性があるため、血中濃度を測りながら慎重に使用。 |
スピロノラクトンが肝臓の薬物代謝を変化させるため、半減期が短縮または延長する報告あり。 |
リチウム製剤 ・炭酸リチウム |
リチウム中毒を起こすおそれがあるため、血中リチウム濃度の確認が必要。 |
ナトリウム排泄が増えると、リチウムイオンが体に溜まりやすくなるため。 |
非ステロイド性消炎鎮痛剤 ・インドメタシン等 |
降圧効果が弱まったり、腎機能障害のある人で高カリウム血症発現の報告あり。 |
プロスタグランジン抑制によりナトリウムと水が溜まりやすくなり、同時にカリウムも増える 特に腎機能障害はリスクが高まる。 |
参照: https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/medley-medicine/prescriptionpdf/530100_2133001F1654_1_07.pdf
スピロノラクトンと他の薄毛治療薬との併用

薄毛治療では、ひとつの薬だけでなく複数の治療薬を組み合わせることで、より高い効果が期待できる場合があります。
スピロノラクトンはホルモンの影響を抑える作用があり、海外では他の薬と併用されることもあります。
たとえば、発毛を促すミノキシジルと組み合わせることで相互に作用を補い合うことができます。
一方で、AGA治療薬として知られるフィナステリドやデュタステリドとは効果や使用対象に違いがあります。
以下では、それぞれの薬との併用や違いについて解説します。
ミノキシジルとの併用効果
スピロノラクトンは、ミノキシジルと併用することで薄毛改善に役立つ可能性があります。ミノキシジルは血流を促して発毛を後押ししますが、副作用として体内に水分がたまり、むくみが出ることがあります。スピロノラクトンは男性ホルモンの働きを抑えるだけでなく、利尿作用で余分な水分を排出するため、この点でも相性が良いと考えられています。
ただし、効果の現れ方や副作用の程度には個人差があるため、必ず医師の指導のもとで併用することが大切です。
フィナステリドやデュタステリドとの違い
フィナステリドやデュタステリドは、男性型脱毛症(AGA)の治療で広く使われる薬ですが、女性には使用できません。
特に妊娠中に投与すると、男性胎児の生殖器の正常な発達を妨げる恐れがあるため、女性は禁忌とされています。
そのため、女性の薄毛治療(FAGA)では、ホルモン作用を抑える別の選択肢が必要となります。
スピロノラクトンは抗アンドロゲン作用を持ち、男性ホルモン由来の脱毛を抑える効果が期待できる一方で、女性への投与も認められている点が特徴です。
女性の薄毛治療では、フィナステリドやデュタステリドは使用できません。そのため、代わりにスピロノラクトンが検討されることがあります。
スピロノラクトンの入手方法と費用(自由診療での取り扱い含む)

スピロノラクトンは、日本国内では高血圧や浮腫などの治療薬として承認されている医療用医薬品であり、市販薬としては販売されていません。
そのため使用を希望する場合には、必ず医師の診察を受けて処方を受ける必要があります。
なお、女性の薄毛治療に関しては日本では未承認であり、自由診療における医師の裁量で取り扱われることがあります。
この場合、保険は適用されず費用は全額自己負担となり、クリニックごとに料金体系やサポート内容が異なります。
また、個人輸入による入手は品質や安全性が保証されず、健康被害が生じた場合も救済制度の対象外となるため推奨されません。
ここでは、スピロノラクトンを検討する際に知っておきたいポイントを解説します。
医師が取り扱う医療機関について
自由診療におけるスピロノラクトンの費用目安
個人輸入で入手する場合のリスク
医師が取り扱う医療機関について
スピロノラクトンは承認薬のため、市販で購入することはできず、必ず医師の診察を経て処方されます。
本来は循環器系の病気などに使われる薬です。薄毛治療については日本では未承認ですが、一部のFAGA専門クリニックや美容皮膚科、美容外科、オンライン診療などで自由診療として扱われることがあります。
一方、インターネット通販等での入手は、偽造品や品質管理が不十分な製品が混在している可能性が高く、安全性が保証されません。
副作用のリスクや用量の調整を安全に行うためにも、必ず信頼できる医療機関で医師の診察を受けてから利用することが大切です。
自由診療におけるスピロノラクトンの費用目安
自由診療として薄毛治療に用いられる場合、スピロノラクトンの費用は1か月あたりおおよそ1,800円〜3,600円程度とされています。
ただしこれは薬代のみで、初診料や再診料、検査費用、アフターケア費用などが加算される場合があります。
また、複数月分をまとめて処方するクリニックでは割引が適用されることもあります。
薄毛治療は長期的な継続が前提となるため、価格だけでなく、医師の診療体制やサポート内容を含めて総合的に判断することが重要です。
個人輸入で入手する場合のリスク
スピロノラクトンを個人輸入で入手する方法も存在しますが、以下のようなリスクが伴います。
品質や安全性が保証されていない
成分表示に誤りや劣化がある可能性がある
副作用が発生しても「医薬品副作用被害救済制度」の対象外となる
こうしたリスクを避けるためにも、必ず医師の診察を受け、正規の医療機関を通じて入手することが安全です。
スピロノラクトンのよくある質問

スピロノラクトンを使用する際、服用方法や効果を感じられるまでの期間、副作用の有無など、気になるポイントが多いのではないでしょうか。
よく寄せられる疑問に対して分かりやすく解説しているので、実際に使用を検討する際の参考にしてください。
スピロノラクトンで太ることはありますか?
一般的には報告は少ないものの、体質や体調によって体重変化を感じる場合があります。
スピロノラクトンには利尿作用があり、体内の余分な水分を排出することでむくみを改善し、水分の排出によって体重が軽くなることの方が一般的です。
ただし、体液バランスの変化で一時的に体重が増減したり、体調の変化により食事の傾向が変わることで、太ったと感じる場合もあります。
体重増加を心配する際は、薬の影響だけでなく生活習慣や他の要因も考慮することが大切です。
もし不安がある場合は、医師への相談がおすすめです。
飲み忘れたらどうすれば良いですか?
スピロノラクトンを服用し忘れた場合は、気づいた時点でできるだけ早く1回分を服用してください。
ただし、次の服用時間が近い場合は、忘れた分を無理に追加せず、通常どおり次の時間に1回分だけを飲むようにしましょう。
過剰投与による副作用や体内の電解質バランスの乱れを防ぐため、絶対に2回分を一度にまとめて服用することは避けてください。
安全に薬の効果を得るためには、飲み忘れに気づいた際の対応方法を正しく理解しておくことが重要です。
市販薬はありますか?
スピロノラクトンは、日本国内で高血圧や浮腫などの治療に用いられる医療用医薬品であり、市販薬としては販売されておらず、必ず医師の処方が必要です。
使用には処方箋が必要で、他の病気や併用薬との相互作用や副作用のリスクがあるため、必ず医師の診察と管理のもとで使用されます。
市販薬は一般的に安全性が高く、誰でも利用できるように設計されていますが、スピロノラクトンはそのような市販薬とは異なり、医師の判断に基づいて処方される薬です。
なお、女性の薄毛治療を目的とした使用は国内では未承認であり、希望する場合は自由診療として医師に相談する必要があります。
効果が出ない場合はどうすればいいですか?
一般的に髪の成長サイクルは通常3〜6ヶ月かかるため、すぐに成果が出なくても一定の期間は治療を継続する必要があります。
さらに効果を引き出すためには、以下の方法が有効です。
頭皮マッサージで血行促進を図る
栄養バランスの取れた食事を心掛ける
紫外線対策で頭皮ダメージを防ぐ
万一、6ヶ月以上経っても効果が実感できない場合は、自己判断で中止せず、医師に相談しましょう。
薄毛治療は効果が現れるまでに時間がかかるため、普段の生活にも気を付けながら進めることが大切です。
スピロノラクトンで抜け毛が増えるのはなぜですか?
スピロノラクトンの服用開始後に一時的に抜け毛が増えることがありますが、薬が体に作用する過程で自然に起こる現象です。
抜け毛の理由として、下記が考えられます。
ホルモンバランスの変化による影響
初期脱毛
治療薬が体質に合わない
過剰なアンドロゲンの抑制に伴い、エストロゲンやプロゲステロンとの相互作用で一時的に抜け毛が増える場合があります。
また、毛周期の変化により毛根が一時的に休止期に入り、新しい髪の成長準備を始めることで、初期脱毛が起こる可能性があります。
腎機能やホルモン感受性の個人差により、薬が期待通りに作用しない場合があるため、自己判断せず医師に相談するのがおすすめです。
まとめ|スピロノラクトンは女性の薄毛治療に使われることがある薬(国内未承認)剤

スピロノラクトンは、ホルモンバランスの乱れに関連する脱毛、とくに女性型脱毛症(FAGA)の改善に応用されることが海外で報告されています。国内では承認されておらず、自由診療において医師の裁量で使用される場合があります。
アンドロゲンの作用を抑えることで、毛根への負担を軽減し、髪の成長について一定の効果が示唆される研究もありますが、日本では承認されていません。
また、ミノキシジルなどの発毛促進薬と併用することで、より高い治療効果が見込めます。
副作用としては、体内の水分バランス変化やホルモン関連の影響がありますが、医師の管理下で適切に使用することで、副作用リスクを管理しやすくなります。
医師の指導のもとで継続的に服用や生活習慣改善を行うことで、薄毛改善に寄与する可能性があると考えられています。
参照リンク
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PMDA(医薬品医療機器総合機構) 医療用医薬品 : スピロノラクトン
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スピロノラクトン錠25mg「トーワ」